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長崎のふつうは世間のふしぎ展
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長崎を遊びつくすためのウェブマガジン

世界の景色が混じり合う長崎の外国人居留地で、そこに暮らす同世代と出会った。
2023.08.21

世界の景色が混じり合う長崎の外国人居留地で、そこに暮らす同世代と出会った。

グラバー園やオランダ坂しか知らなかったけれど、長崎の「異国情緒」はもっと奥が深かった! ここでしか見られない風景、この地域を愛する同世代との出会い。長崎の外国人居留地を巡る旅は、小さな驚きと発見に満ちていました。

今回の旅人

Traveler

ひとこと

長崎のふしぎに出会う旅

Guest

ヨシフクホノカ

Z世代に絶大な支持を受ける「エモい」系カルチャーを代表するアーティスト。ノスタルジアを喚起させるレトロポップなタッチの作品が話題となり、大手アパレルブランドとのコラボレーションを次々と実現。

長崎県出身。

グラバー園やオランダ坂しか知らなかったけれど、長崎の「異国情緒」はもっと奥が深かった! ここでしか見られない風景、この地域を愛する同世代との出会い。長崎の外国人居留地を巡る旅は、小さな驚きと発見に満ちていました。

どこを切り取っても絵になるまち!
ヨシフク ホノカ

居留地に暮らす若者たちの、新しいカンコウ&カンケイ案内所

こんにちは。イラストレーターのヨシフクホノカです。わたしは長崎生まれですが、長崎市の観光エリアは、暮らしている場所から離れていたので、私にとっても観光のまちです。
長崎を離れて暮らす今、県外の友だちに長崎を紹介するつもりで長崎旅を楽しんでみました。

まずは長崎駅近くのカフェで、e-bikeをレンタル。長崎らしい異国情緒を求めて、有名なグラバー園のある南山手エリアと、オランダ坂で知られる東山手エリアを目指しました。
この辺りはかつて多くの外国人が暮らしていた「外国人居留地」で、今も当時の街の雰囲気や外国人の暮らしの面影を感じることができます。

そんな南山手・東山手にほど近い路面電車の終点、石橋電停そばの“ネオ”観光案内所『HUBs Ishibashi』が面白いと聞いて、寄ってみることにしました。

まるで小さなカフェのような雰囲気で、観光案内だけでなく、セルフ喫茶やチョイ飲みまでできる、観光客も地元の人もふらりと立ち寄りやすいスポット。
こんな居心地のいい案内所なら、旅の目的地にしたいぐらいです。

外国人居留地である南山手と東山手をつなぐこの地に、拠点を作ろうと立ち上がったのは私と同世代の、地元の若い人たちです。大学生からベテラン長崎人まで多彩なボランティアメンバーが運営しているそうです。

代表の岩本諭さんは大分出身。大学で長崎市の斜面市街地を研究して以来、長崎にハマったそう。たまたま居合わせた地元の方には「居留地LOVER」として有名な人だよと教わりました。南山手で古民家を改装したシェアハウスを作り(!)自らもそこに居住。地域の交流イベントや空き家活用の提案をする団体の代表も務められていて、まちづくりの中心人物なんだそうです。

「ここに行くならここにも寄ると面白い、これが好きならこの人に会うといい」。一歩踏み込んだ“関係”まで案内してくれる“ネオ”な案内所のおかげで、これまで見えていなかった長崎の新しい魅力が発見できそうです。

まちの未来を思って行動するメンバーのみなさんはなんだか頼もしくて、そのわいわい感がうらやましく感じました。私と同世代の人たちに出会えたのもうれしかったな。

次はさっそく教えてもらったカフェへ。e-bikeなので坂道もらくらくです。

おとなりは中国とヨーロッパ。東山手の洋館カフェへ

石畳のオランダ坂をのぼると、かわいい景色!幕末から明治にかけて建てられた7棟の水色の洋館がずらり並び、日本とは思えない風景です。建物がどれも似た雰囲気なのは、社宅や賃貸住宅用に設計されたからなんだとか。
何だか初めて見る景色ではない感じがしたので家族に聞いてみたら、小さい頃この辺りに遊びにきたことがあったとのこと。すっかり忘れてたけど、どうりで懐かしい気がしたんだ。

ひと通り外から見学したあとで、『地球館 cafe slow』へ。洋館のカフェです。
地球館は25年ほど前から続く、国際交流の拠点。その場所を受け継いで、より気軽に足を運んでもらえる場にしようと2022年にカフェをリニューアル。
ここの館長、青栁智子さんも居留地のまちづくりに取り組む若者の1人。なんだか親近感が湧いて話が合うなと思ってたら、私と1歳違いの超同世代でした。
そんな青柳さんは音楽が好きで、地域音楽コーディネーターとしても活動されているらしく、地球館では音楽を楽しむイベントも開催したんだって。すごい行動力!

飴色に磨かれた階段を上がって、2階へ。ベランダから見えたのは、欧風の洋館に日本の瓦屋根、その向こうには中国様式の孔子廟。少し歩けばグラバー園や大浦天主堂も。
まるで居留地が一番栄えた時代に来たかのようで、改めて「長崎の異国の混ざり具合ってこんなにもすごかったんだ」と感じました。国境も時間も越えたふしぎな世界、県外の友人たちに見せたらもっと驚くだろうな。

ランチには「スパイスカレー」をチョイス。長崎は出島を通じたスパイス交易の歴史もあるんだって。香辛料を求めて始まった大航海時代から、貿易の拠点として活躍してきた長崎。そんな歴史を思いながら食べるカレーは格別です。
地元の野菜たっぷりのサラダプレートは、全て丁寧に作られた味がして、こんな店が近所にあったらって思いました。

もちろん食後にはデザート。近くのカステラ屋さんのカステラと、コーヒー伝来の地にちなんだ隠し味が、クリーミーなソフトと調和する「居留地パフェ」も絶品。長崎に来たらまた絶対食べたいです。

自転車でぶらり。観光地ではない普通の地元の商店街がエモい

洋館群に別れを告げたら、気の向くまま自転車を走らせることに。普段あまり運動する機会がないから、自転車は疲れるかなと思っていたけど、e-bikeは坂の多い長崎のまちでもスイスイ進みます。
「長崎くんち」の舞台で有名な諏訪神社の近くに、地元の人たちがたくさん行き交う「新大工商店街」を発見。ちょっと寄り道していきます。

昔ながらの市場の雰囲気、夕飯の買い物でにぎわう通り。ここに住んでいるような気持ちで、店先をぶらぶらと歩きます。お店の人の長崎弁がとっても懐かしくて、地元で過ごした子ども時代を思い出します。
都会とも観光地とも違う、この土地の普段の空気感に浸っていると、地元の町がちょっと恋しくなりました。

ふと見上げると「シーボルト通り」の標識。この近くにはオランダの軍医として長崎にやってきたシーボルトの家と私塾「鳴滝塾」の跡があるんだそう。今年はちょうど来日200年の年なんだって。

シーボルトといえば日本に西洋医学を伝え、世界に日本を広めた偉人。長崎にゆかりがある人だからか、歴史の授業で習ったことを今でも妙に覚えています。
あてもなく巡った先でも外国人の足跡に出会えるのって、長崎ならではなのかもしれませんね。

長崎出身の私でも、知らないことだらけの長崎旅。今度はまた別のまちもゆっくり歩いてみようと思います。