Now loading...

メニュー
長崎のふつうは世間のふしぎ展
CHECK!

長崎を遊びつくすためのウェブマガジン

「当たり前」を見つめると、地域の魅力が見えてくる。” I am 長崎人 ” 講師 高橋俊宏さん(『Discover Japan』統括編集長 )
2023.12.14

「当たり前」を見つめると、地域の魅力が見えてくる。” I am 長崎人 ” 講師 高橋俊宏さん(『Discover Japan』統括編集長 )

長崎市民や長崎市に愛を持つ「長崎人」の皆さんと、長崎市の観光を盛り上げようと始まった「I am 長崎人」の取り組み。長崎市観光マスターブランド「暮らしのそばに、ほら世界。」の理解を深めながらその魅力を語り、発信できるようになるための学びの場で、令和5年度講師を務めさせていただきます。ここでは編集の視点から、地域の魅力の見つけ方について考えてみたいと思います。

長崎人

Nagasaki Jin

ひとこと

長崎の魅力、再発見しよう

Guest

高橋 俊宏

日本の魅力再発見をテーマにした雑誌『Discover Japan』統括編集長。長崎市では令和3年度、観光マスターブランド検討会の座長としても活躍。岡山県出身。

長崎市民や長崎市に愛を持つ「長崎人」の皆さんと、長崎市の観光を盛り上げようと始まった「I am 長崎人」の取り組み。長崎市観光マスターブランド「暮らしのそばに、ほら世界。」の理解を深めながらその魅力を語り、発信できるようになるための学びの場で、令和5年度講師を務めさせていただきます。ここでは編集の視点から、地域の魅力の見つけ方について考えてみたいと思います。

ヒントは「昔からあるもの」の中にある
高橋俊宏さん

長崎の魅力は「わからん」!?

長崎のいいところは?と聞かれたとき、僕は「わからん」と答えます。ご想像通り、わからないという意味ではなく「和華蘭」のことです。
例えば中華風の孔子廟の隣には、西洋風のオランダ坂と洋館、その意匠のあちこちに和の要素を見ることができます。
この「和華蘭」の景色のなかで今も普通の暮らしが営まれているのが、本当に独特ですてきなんですよね。
中華街は他にもあるけれど、西洋が混じっているのは全国どこを探してもない。ここ長崎だけの風景です。

土地の歴史、記憶、地形にも着目

雑誌『Discover Japan』では、全国各地を訪れてその文化を中心に地域の魅力を紹介しています。その土地の魅力を深掘りするための手がかりはいろいろありますが、意外なところで注目すべきは、他の町との位置関係や地形です。

位置関係や地形によって、そこにある暮らしや人柄、文化の色合いは大きく影響を受けるんだなと、あちこちの地域を見て来て感じました。
長崎だったら港を中心に、斜面に家が並んでいるというようなことですね。
港からどんなものが入って出ていくのか、斜面に住む人の生活はどのようなものなのか。そのあたりを土地の歴史や記憶を絡めながら掘っていく。実際にその場所に身を置いてみる。
そうするとこんな文化があるのか、というその土地らしさや価値が、驚きや感動とともに浮かび上がってくるんです。

ヒントは古いものの中に

新たな魅力を再発見するとき、ヒントにすべきはその地域に古くからあるもの、今も残っているもの、だと思います。
名物として確立されているものもあれば、「取り立てて言うことではない」と思うような「当たり前」の顔をして日常に溶け込んでいることもしばしばです。
地元の人にとっては当たり前で、決して新しいものではないので、そこにすぐ価値を見出だすのは難しいと思いますが、そんなローカルでディープな「地元の当たり前」こそが「らしさ」だし、旅人にとっては新鮮で価値のある感動ポイントなんです。

「当たり前」に気付くためには

そうは言っても、自分の当たり前に気づくのは至難の業ですよね。そこでまずは自分の暮らし、地域の文化を語ってみてほしいと思います。語る相手は、できれば地元の人ではない、県外の友人や観光客の人がいいですね。「日頃はこんな暮らしをしている、気取らない楽しみはこれ」そんな普通の会話の中で「いや、それ珍しいよ。僕の地元にはない文化だ」と反応が返ってくることがあると思います。それが自分でも気付かなかった「当たり前」です。

自分が旅に出る、というのもいい方法だと思います。訪れた土地の暮らしに触れることで、自分の住む地域を客観的に見る視点が持てるし、違いを感じることができます。
それに旅人がどんな瞬間に喜びを感じるのか、訪れた先でどんな体験がしたいのか、その土地の何を知りたいのかを自分ごととして丸ごと理解することができます。
旅行や出張は、地元の「当たり前」に気付けるチャンスですね。

修学旅行先という強みを活かして

長崎は多くの人が訪れたことのある、全国有数の観光地です。岡山出身の私も学生時代の修学旅行は長崎でしたし、最近では娘も修学旅行で長崎に来ています。
学生時代に一度訪れている、その土地や地名を知っている、というのはものすごいアドバンテージです。
先日数十年ぶりにグラバー園に行きましたが、もちろん変わらない姿で迎えてくれて、懐かしい気持ちになりました。
「修学旅行で行ったから、もう行かなくていいかな」ではなくて、「大人になってもう一度訪れてみたら面白そう」と思ってもらえるような働きかけがうまくいくと、修学旅行先としての強みを最大化できるんじゃないかなと思います。
そのあたりも、長崎人の取り組みで皆さんと具体的に考えてみたいですね。

これからの講座テーマ

私が担当させていただく音声講座のテーマは次の通りです。Instagramやspotifyのpodcastで順に公開されます。

・第1回 I am 長崎人 企画について
・第2回 長崎の好きなコト・モノを挙げてみよう
・第3回 長崎のふつうを疑ってみよう
・第4回 長崎のふつうを伝えてみよう

テーマは企画の運営者である長崎国際観光コンベンション協会の皆さんと一緒に練り上げました。
『Discover Japan』では、土地の魅力や価値を再発見し、それを再編集して再発信するというモットーで全国各地の文化と向き合っています。その編集の視点を用いて、長崎の皆さんにも地元のよさを再発見・再編集・再発信してもらえるのではないか、というアイデアが元になっています。ぜひ聴いてみてくださいね。

地方に興味のある若い世代にも届けたい

コロナ禍を経て、ライフスタイルや価値観の多様化はますます広がっています。「地方から都会に出たい」という気持ちを持つ人が多数派でしたが、今は逆の流れも感じます。
どこにいても同じ情報が得られる環境が整い、都会と地方の時差もほぼないに等しい時代です。「無理に都会にいるより、地方にいた方が豊かに生きられるかも」と移住する人も増えています。特に東京で暮らしていると、地方で暮らすことや地方を応援することに興味のある若い世代が一定数いるという印象を受けます。
一方で「何から始めたらよいのか」「どうすれば移住のきっかけに出会えるのか」と迷っている姿も知っています。そんな人たちに、今回の「I am 長崎人」の取り組みが届くといいなと思っています。自分のこれからを考えるきっかけになったり、思いを発信する場にしてもらえたらうれしいですね。

若者の流出が大きな問題となっている長崎ですが、大学進学や就職などで一度別の地域に出て行ったとしても「他の地方とは一味違うな」「いつかは戻りたい場所だな」と思える求心力のある街だと思います。
その求心力の正体を再発見し、再編集して再発信する。それが今回の「I am 長崎人」の取り組みの肝であり、目指すところです。

長崎市民をはじめ出身者、長崎に愛のある方ならどなたでも参加できます。音声講座をきっかけに、自分の当たり前を見つめ直すことから、ぜひ一緒に始めてみましょう!