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高級なフグを市民は気軽に食べている?! 長崎でフグ料理体験&フグ出汁うどんを堪能
2023.12.21

高級なフグを市民は気軽に食べている?! 長崎でフグ料理体験&フグ出汁うどんを堪能

お魚がおいしい長崎市ですが、実は「フグ」も有名だって知ってました? なかなか手のでない高級なフグ料理がとんでもなく気軽に味わえちゃうんです。「フグ出汁うどん」や「フグ皮入り揚げかまぼこ」は知る人ぞ知るディープな長崎名物。その評判は口コミで広がって、地元だけでなく県外や海外のお客さんもわざわざ訪れているんだとか。なぜ長崎でフグなのか? そして長崎名物のフグ料理は一体どんなおいしさなのか? 今回はそんな長崎とフグの関係に迫るべく、茂木(もぎ)地区へ向かいました。

今回の旅人

Traveller

ひとこと

長崎のふしぎに出会う旅

Guest

ヨシフクホノカ

Z世代に絶大な支持を受ける「エモい」系カルチャーを代表するアーティスト。ノスタルジアを喚起させるレトロポップなタッチの作品が話題となり、大手アパレルブランドとのコラボレーションを次々と実現。

長崎県出身。

お魚がおいしい長崎市ですが、実は「フグ」も有名だって知ってました? なかなか手のでない高級なフグ料理がとんでもなく気軽に味わえちゃうんです。「フグ出汁うどん」や「フグ皮入り揚げかまぼこ」は知る人ぞ知るディープな長崎名物。その評判は口コミで広がって、地元だけでなく県外や海外のお客さんもわざわざ訪れているんだとか。なぜ長崎でフグなのか? そして長崎名物のフグ料理は一体どんなおいしさなのか? 今回はそんな長崎とフグの関係に迫るべく、茂木(もぎ)地区へ向かいました。

絶品フグ出汁うどん、リピ決定です!
ヨシフク ホノカ

こんにちは。イラストレーターのヨシフクホノカです。私は長崎生まれですが、長崎市は暮らしている場所から離れていたので、私にとってもお出掛け先であり、観光のまちです。
地元を離れて暮らす今、県外の友だちに長崎市内を紹介するつもりで本気で旅を楽しみました。

今回はフグを求めて茂木(もぎ)地区へ。地元で茂木といえば「びわ」が有名で、子どもの頃からなじみのある地名なんです。だけど訪れるのは初めて。高級料理の代表格・フグが有名な場所だとは、知らなかった…!

長崎市中心部から南東へ車を走らせることおよそ20分。美しい橘湾が目の前に広がります。
漁港を囲むように住宅や店が並ぶ、この静かな漁師町が茂木です。海の向こうには島原半島と天草が見えます。「海の景色、気持ちいいー!」あまりにきれいなので、スマホで撮影タイム。少しお散歩することにしました。

漁港を囲むように住宅や店が並んで、漁船のエンジン音が聞こえたり猫がお昼寝していたり。市内とは違う穏やかな雰囲気に、旅気分が一気に高まります。

フグ皮入り揚げかまぼこを作る

まず目指したのは、海の近くにある食堂「漁師飯なかざき」。ここはフグ問屋で地元のフグを全国各地に卸している中崎水産さんが、フグの魅力をより身近に楽しんでほしいと運営されています。

店頭ではフグの唐揚げや揚げかまぼこが売られていていい香り! 今すぐ食べたいけれど後のお楽しみにして、まずは予約していた体験プログラムに参加します。
ここでは魚をさばいて、フグ皮入りの揚げかまぼこを作って食べられるんです。地元の小学生や修学旅行生も数多く訪れる人気のプログラムです。
教えてくれるのは、社長の中﨑光浩さんとスタッフさんたち。「どこから来たとね〜?」とまるで久々会った親戚のように話し掛けてくれて、すぐに緊張がほぐれます。

さっそく体験スタート! 最初はすり身になる魚をさばきます。魚を食べるのは大好きだけど、自分でさばくのは初めてです!
この日さばくのは「きびなご」と呼ばれる魚。透き通るような身で新鮮さがわかります。
教わった通りにおそるおそる頭をちぎって、お腹に指を入れます。骨に沿ってスーッと指を通したら身を開いて、残った内臓と骨をつまんで取ります。「わー、できた!」


このあたりでは小さな魚を手でさばく手開きのことを「おびく」と言うんだって。2尾、3尾とおびくうちに慣れてきました。「ヨシフクさん、上手すぎばい!」社長に褒められていい気分です。

ある程度の量がさばけたら、すり鉢とすりこぎで魚をすり身にする作業。スタッフさんがやっているのを見ると簡単そうだけど、実際にやると意外と重たい。「もっと大きく回して」と応援してもらいながら、すばやくつぶしていきます。


社長いわく「不思議なもんで同じ魚ば使っても、すり方で味の変わるとばい」。修学旅行生など団体客はいくつかの班に分かれて作業するけれど、同じ材料でも出来上がりを食べると全部違う味になるんだって。面白い! 私のはどんな味になるんだろう?

あらかじめ用意してもらったすり身を混ぜてもう一度すったら、ここでフグ皮の出番! フグ皮をハサミで細く細くカットしていきます。「フグの皮ってこんなにコリコリだったんだ!」切るたびに弾けるようなクセになる感覚です。これが揚げかまぼこの食感のアクセントになるんだって! さっきのすり身に混ぜたら成形していきます。

コロコロと転がしてまんまるにしたり、かわいいドーナッツ型やハート型も。子どもの頃の粘土あそびのようで、童心にかえりました。最後にパン粉をまぶしたら、揚げる作業はスタッフさんにおまかせします。

なぜ長崎でフグなのか?

その間に、社長に気になっていたことを質問しました。

失礼ながら、長崎のフグのことをほとんど知らなかったのですが、長崎市で気軽にフグが食べられるのはどうしてなんですか?
ヨシフク
ホノカ
実はね、長崎県は養殖トラフグの生産量が日本一。その産地の一つが茂木の隣町の戸石っていうところさ
中﨑社長
長崎県が日本一なんですね! 知りませんでした! 養殖トラフグの産地だからフグが豊富にあって、身近で、だからリーズナブルに食べられるんですね
ヨシフク
ホノカ
そうそう。元々はこの辺りで天然モノのトラフグも水揚げされよったとよ。私も漁師の家に生まれてね、徐々に養殖がメインになってきてから問屋になった。”長崎といえばフグ”と言われるくらい、長崎のフグば有名にしたくてこの体験をやったり、食堂では”フグ出汁うどん”ば出したりしよるとよ
中﨑社長

なるほど、長崎でなぜフグなのか謎が解けました!
茂木は昔から天然モノの魚を水揚げする港で、その隣の戸石は入り江の地形を活かした養殖の港だったんだって。戸石ではトラフグと並んでかきの養殖も盛んで、毎年11月末〜12月中頃には「戸石とらフグ・かき祭り」が開催されてとてもにぎわうそう。トラフグとかきなんて、まさに夢の共演! 今度はこの祭りに合わせて帰省しようっと。

謎が解けたところで、ちょうど揚げたてのかまぼこが出来上がりました!
さてさて熱々をいただきます。「んー、おいしい!!」
ときどきプリッと感じる歯触りがフグの皮だ! 熱で溶けて少しとろりとした部分もたまりません。あと1個、もう1個とついつい手が伸びるおいしさです。

出来たての揚げかまぼこを食べていたら、本格的にお腹が空いてきたので、ランチをいただくことにしました。

フグ出汁うどんとフグ刺しを堪能

のれんをくぐると、”本日のおすすめ”が目に入ってびっくり! おいしいと噂のフグ出汁うどんとフグ刺しのセットが1,000円台で食べられるなんて! 迷わず注文しました。想像よりもはるかに気軽に楽しめる長崎のフグ、あらためて驚きです。

まもなく料理が運ばれてきました。大きな丼のうどんと大きな皿のフグ刺しは、トレーに全く収まっていなくてコスパ最強! 産地だから叶うふとっぱらなセットです。

まずは楽しみにしていたフグ出汁うどんの黄金色に澄んだスープから。

「うまーっ!」思わず声が出ます。コクのある甘みとどこまでも深い旨みに、フグの底力を感じずにはいられません。そんな旨みが絡む細めのもちもち麺がおいしさをさらに盛り上げます。

うまかやろ? スープはフグのアラば焼いて、時間かけてゆっくり出汁ば取るとよ。さば節とカツオ節もブレンドして、フグの旨みば引き出しとる。麺もこのフグ出汁に合うように特注ばい。フグばごま油でコトコト煮詰めたラー油も試してみらんね?
中﨑社長

途中で味を変えて楽しむ”味変”におすすめのラー油は、餃子や炒め物にもぴったりで、お土産に買って帰る人も多いんだって。これまたフグの旨みが余すところなく引き出された絶品です!
こんな贅沢でおいしいうどんは生まれて初めて。県外や海外からもわざわざ食べに来るという理由がよくわかります。

分厚いのが地元流!

次はフグ刺しをいただきます。

あれ? イメージしていたフグの刺身よりずっと分厚いですね
ヨシフク
ホノカ
気づいたね! この分厚さが地元流よ。フグは器の模様が透けるほど薄い薄造りにするのが一般的けどね、新鮮な刺身ば食べ慣れた長崎の人たちは、コリコリの食感が好いとる。よその人はびっくりさすよ
中﨑社長

さすが新鮮な魚で育った長崎人! 地元流の分厚めのフグ刺しは噛むほどに甘くて、口いっぱいに旨みが広がります。梅肉ソースや酢味噌との相性も抜群。フグ皮はコラーゲンたっぷり、歯の上でプリプリと弾みました。

フグでおなかいっぱいになるなんてまさに「フク(福)」な時間!
揚げたてフグ皮入りかまぼこにフグ出汁うどん、分厚いフグ刺し。県外では高級料理なのに、地元ではリーズナブルで気軽に食べられる、それでいてしっかりとフグのおいしさが楽しめる! 至福の時間でした。
また絶対にリピしたいし、友だちや家族にも教えてあげたいな。

一杯のうどんで味を複雑に変化させるふぐラー油。お土産におすすめ。


長崎に来たら、ちゃんぽんもいいけどフグも! トラフグ養殖日本一だからこそのフグの身近さをぜひ長崎で感じてほしいと思います。