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マチナカで長崎色に染まる1日。こだわりのお土産選びと、長崎くんちの熱気を体感。
2023.09.01

マチナカで長崎色に染まる1日。こだわりのお土産選びと、長崎くんちの熱気を体感。

今回の旅のキーワードは、お土産選びと長崎くんち。学生時代の思い出の老舗文房具店でセンスのいいお土産選びを楽しんだ後、長崎くんちの練習を見学しました。街中に響き渡る掛け声、目の前で豪快に曳き回される大型の船、練習とはいえ本番さながらの迫力は必見です。

今回の旅人

Traveler

ひとこと

長崎のふしぎに出会う旅

Guest

ヨシフクホノカ

Z世代に絶大な支持を受ける「エモい」系カルチャーを代表するアーティスト。ノスタルジアを喚起させるレトロポップなタッチの作品が話題となり、大手アパレルブランドとのコラボレーションを次々と実現。

長崎県出身。

今回の旅のキーワードは、お土産選びと長崎くんち。学生時代の思い出の老舗文房具店でセンスのいいお土産選びを楽しんだ後、長崎くんちの練習を見学しました。街中に響き渡る掛け声、目の前で豪快に曳き回される大型の船、練習とはいえ本番さながらの迫力は必見です。(※記事の内容は2023年に取材したものです)

マチナカだけで長崎をとことん味わう!
ヨシフク ホノカ

地元密着、文具店の中にお土産スポット?

こんにちは。イラストレーターのヨシフクホノカです。わたしは長崎生まれですが、長崎市は暮らしている場所から離れていたので、私にとってもお出掛け先であり、観光のまちです。
地元を離れて暮らす今、県外の友だちに長崎市内を紹介するつもりで本気で旅を楽しみました。

e-bikeに乗って外国人居留地や地元商店街を巡った(詳しくは別記事で!)あとは、たくさんの市民や観光客が行き交う長崎市の中心、浜町(はまのまち)アーケードへ。地元の友人に勧められ、老舗文具店 石丸文行堂(ぶんこうどう)本店にお邪魔しました。実はここ、学生のころ長崎市内に来たら必ず寄ってはワクワクお買い物をしていた、思い出の文具屋さんなんです。懐かしい〜!

今回のお目当ては、その1階フロアに2019年にオープンしたお土産スポット「長崎マルシェJimo(ジーモ)」。店内には食品、お酒、雑貨など長崎県内のいいものがたくさん並んでいます。意外な地元の魅力もお土産を通して発見できるのが楽しいですよね。どれも長崎ならではで、デザインも可愛いものがいっぱい。迷ってしまったので、担当の太田さんに相談してみることにしました。

ヨシフク「お世話になっている目上の方(事務所の社長!)には何がおすすめですか?」
太田「もしお酒がお好きなら、クラフトビールやからすみを使った商品、お塩も喜ばれますよ」
ヨシフク「お塩にこだわるのいいですね!この『あごだし塩』って長崎らしくていいですね。これにします!友達には何がいいかなあ」

太田「お友達だったら、デザインから選ぶのも楽しいですよ」
ヨシフク「この『そえぶみ箋』かわいいですね。たくさん集めたくなる!」
太田「ありがとうございます。文具屋自慢のオリジナル商品なんです。食品でしたらレトルトカレーや五島(ごとう)うどんも人気ですよ」
ヨシフク「すてきなものばかりで迷ってしまいますね。そしたら、この五島うどんにします!」

「県内のお土産の中でも特に作り手さんの思いが伝わるもの、デザインがいいもの、思わず手に取りたくなるものという基準で商品を選んでいます。カステラやちゃんぽんだけではない長崎の幅広い魅力を、観光の方にはもちろん地元の人たちにも知ってほしいと始めたコーナーなんですよ。」と太田さん。

店内を見渡してみると、観光のお客さんより地元のお客さんが多いみたいです。自分へのごほうびにお菓子を選んだり、仕事帰りにクラフトビールを求めて来店する男性もいるそう。太田さんたちの「長崎の魅力をたくさんの人に伝えたい」という願いが、地元の人たちにちゃんと届いているんだなって思いました。

老舗文具店で ガラスペンとインクの沼へ

懐かしい文具店を見て回っていると、3階でインクコーナーを発見。その日の気分で選ぶカクテルのようなインクに、長崎の景色をイメージした「長崎美景」インク、すごくきれいです。文具好きさんにはたまらないコーナーかもしれない!

見とれていたら「よかったら試し書きしてみませんか?」と社長の石丸さんが声を掛けてくれました。インクを使うならガラスペンがおすすめとのこと。長崎美景インクのシリーズから、大好きなブルー系の「稲佐山ディープインディゴ」と「壱岐ブルーエメラルド」を選びました。いつもデジタルでイラストを描いている私、インクもガラスペンも初挑戦です。

何本もの溝が入ったガラスペンのペン先にインクをつけ、紙をなぞると……ス〜っと気持ちよく線が描けます。ペン先のわずかな引っ掛かりが心地よくて、次々に描きたくなる感じ!それに、一度インクをつけただけなのに、ずっと書ける不思議さにもハマりました

「ガラスペンの先の方に溝がいくつか入っていますよね。そこにインクが溜まっていて、少しずつペン先から紙に落ち続けているんです。一度インクをつけると、ハガキ片面分のメッセージは書くこともできるんです。」

ガラスペンの不思議な魅力とか着心地にうっとりしているのが伝わったのか「ガラスペンとインクの“沼”にハマっちゃう人が多いんですよ」と石丸社長。確かに、これはハマっちゃう。お礼の気持ちを込めて、初めてのガラスペンでサインを書かせていただきました。思い出のお店にサインを飾っていただけるなんて、光栄です!

長崎くんちは「毎年なのに7年に1度」?

石丸社長から、「長崎くんち」の練習が近くで見学できると教わったので、迷わずその足でアーケードを出て思案橋方面へ。小さいころ家族と何度も見に行った長崎くんちですが、練習風景は初めてなのでとっても楽しみです。
夕方6時過ぎ。繁華街の路地を抜けると、おそろいのユニフォームを着た本石灰町(もとしっくいまち)の皆さんが、大きな船の周りに続々と集まっていました。

380年ほど前から続く伝統の祭り「長崎くんち」は、長崎市にある諏訪神社の秋の大祭で、毎年10月7日から9日までの3日間開催されます。皆さんご存じの龍踊(じゃおどり)や、車輪のついた大きな船を動かす曳物(ひきもの)など、町ごとに異なる演(だ)し物の奉納が行われ、たくさんの人でにぎわいます。

長崎くんちは毎年開催されますが、奉納の出番である「踊町」(おどりちょう)が回ってくるのは7年に1度です。
市内58の踊町が7つのグループに分けられていて、毎年持ち回りで奉納を担当するそう。つまりすべての演し物を見たければ7年連続で会場に通わなきゃいけないし、“推し”の演し物があっても7年に1度しか出会えないってこと!

私も長崎出身だけれど、この詳しい仕組みは今回初めて知りました。「毎年なのに7年に1度」のレア度を高めるシステムが、地元の人たちを熱狂させ続ける理由の一つだったんですね!

響き渡る囃子(はやし)の音に、沸き立つ街

本石灰町の演し物は「御朱印船」(ごしゅいんせん)。江戸時代初期、朱印船貿易で巨万の富を築いた長崎の商人・荒木宗太郎と、ベトナムの王族・アニオー姫の嫁入りが再現されます。2人のゴージャスな輿入れの様子は当時の人たちにとって衝撃的だったようで、長崎では最近まで豪華絢爛なことを「アニオーさんの行列のごたる(みたい)」と表現していたそうです。

見上げるほど大きい御朱印船の重さはなんと約5トン! 船上には宗太郎とアニオー役、太鼓やカネを鳴らす子どもたちが乗り込みます。その船をたったの18人で動かすというから驚きです。入念な準備運動が終わり、いよいよ船が動き始めます。

練習会場の中央公園まで、1km弱の道のりを移動。巨大な船が繁華街の狭い路地をギリギリ通り抜ける光景は幻想的ですらありました。子どもも大人も一緒になってお腹の底から出す「エイオー」の掛け声は圧巻、鳥肌モノです。通り沿いのお店からは声援と拍手が。練習でもこの熱気と賑わい。本番はどうなるんだろうと想像しました。

浜町アーケードに入ると、見物客であっという間に人だかりが。囃子の音に街が一気に沸き立つのを感じます。ツウになると、音とその方向で「どの町がどのあたりにいる」とわかるそうですよ。すごい!

練習ならでは 間近で見る迫力の回転!

練習会場の中央公園は、本番の披露場所の1つ。本格的に船を動かす練習が行われます。5トンもある船を人力で制御するのは至難の業。いかに全員の息を合わせられるかが重要だそうです。
リーダーである長采の原田伸一さんが振るのは五色の采(さい)。采は旗のようなもので、笛と一緒に振られます。なんだか指揮をしているみたい。采と笛の合図に、船を動かす人も、船の上で演奏をする子どもたちも集中しているのが伝わります。

歩幅を合わせ、掛け声を合わせ、船は前に後に動かされます。皆さんの額に汗が光ります。一番の見どころは豪快な船の回転です。見事な足さばき、大きな掛け声、路面電車のようなゴトゴトという車輪の地響きと共に船が勢いよく回ります。本番の会場よりも近距離で感じる大迫力、圧倒されっぱなしでした。

エイオーの掛け声に、隣で見学していた中国語圏出身の私のマネージャーのシェンさんが驚いているので理由を尋ねると「エイオーという掛け声は、私たちには『福よ来い』と聞こえています。伝統の祭りに中国語が登場するなんて!」と教えてくれました。長崎が昔から世界と繋がっていたことを実感するエピソードに、感動増し増しです。

練習後、長采の原田さんは「今年はコロナなどの影響で4年ぶりの通常開催。本石灰町にとっては3回の延期を乗り越えた、10年ぶりの待ちに待ったくんちです。1日1日を大切に、ケガのないよう完璧にやり遂げてみんなでくんちを楽しみたいです」と意気込みを聞かせてくれました。

長崎では10月のくんち本番に向けて、街も人もテレビも新聞も、くんちモード全開のラストスパート!久しぶりの開催で、練習を眺める地元の人たちも本当に嬉しそうなんです。くんちにかける熱い思いと愛情がとても伝わってきた1日でした。

2024年の長崎くんちの情報に関して、詳しくはこちらをご覧ください!