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長崎だけの幻の果実「ゆうこう」のふしぎを追い求めたら、酒蔵にたどり着きました。
2023.11.24

長崎だけの幻の果実「ゆうこう」のふしぎを追い求めたら、酒蔵にたどり着きました。

ゆうこうって知ってますか? 地元の人によると、長崎市内の限られた場所にだけ存在する幻の柑橘(かんきつ)らしいのです。ルーツには潜伏キリシタンとの関係があるといわれているようですが、真実は謎に包まれています。しかも新種とわかったのはほんの十数年前! 今回はそんな謎めいた柑橘「ゆうこう」を追いかけて、外海(そとめ)エリアを訪ねました。

今回の旅人

Traveler

ひとこと

長崎のふしぎに出会う旅

Guest

ヨシフクホノカ

Z世代に絶大な支持を受ける「エモい」系カルチャーを代表するアーティスト。ノスタルジアを喚起させるレトロポップなタッチの作品が話題となり、大手アパレルブランドとのコラボレーションを次々と実現。

長崎県出身。

ゆうこうって知ってますか? 地元の人によると、長崎市内の限られた場所にだけ存在する幻の柑橘(かんきつ)らしいのです。ルーツには潜伏キリシタンとの関係があるといわれているようですが、真実は謎に包まれています。しかも新種とわかったのはほんの十数年前! 今回はそんな謎めいた柑橘「ゆうこう」を追いかけて、外海(そとめ)エリアを訪ねました。

地元のお酒に合いすぎる!長崎の希少な柑橘。
ヨシフク ホノカ

こんにちは。イラストレーターのヨシフクホノカです。私は長崎生まれですが、長崎市は暮らしている場所から離れていたので、私にとってもお出掛け先であり、観光のまちです。
地元を離れて暮らす今、県外の友だちに長崎市内を紹介するつもりで本気で旅を楽しみました。

外海(そとめ)地区に行くのは初めてです。長崎市から北西に車を走らせること約40分、陸側は緑が深くてすてきな教会が見えてきました。海には小島が浮かんで、その向こうには炭鉱の島「池島」。晴れた日には五島列島まで見えるとか…すごくきれい! さっきまで街中にいたのに、あっという間にこんな絶景に出会えるからやっぱり長崎って最高です。

ゆうこうってどんな果実?

実際に幻の柑橘、ゆうこうが実っている姿が見られると聞いて、山の方へ向かいました。
待っていてくれたのは、ゆうこうに詳しいという浦川英孝さん。農家さんだと思っていたら、この外海地区にある長崎市唯一の酒蔵「霧氷(むひょう)酒造」の社長さんなんだって。びっくり!

さっそくゆうこうの畑へ案内してもらいます。結構な斜面地。転ばないように地面をぎゅっと踏みしめて社長の後をついて行くと…段々畑には小さな青い実をつけた木がずらり。これが幻のゆうこうなんだ!

カボスみたいでかわいい実!どんな味なんですか?
ヨシフク
ホノカ
味はユズに似ているけど、香りはユズほど強くなくて、さわやかな酸味と穏やかな香りがクセになる、品のある柑橘なんですよ。もう少し大きくなって黄色く色づく10〜12月に収穫します。そのまま食べるよりはマーマレードにしたり、しぼって酢の物に使ったり、もちろんうちのお酒との相性もすごくいいんですよ。霧氷酒造では、ここで収穫したゆうこう100%果汁と、果汁入り甘酒、果汁入りリキュールの3商品を作っています。地元の老舗和菓子店 梅月堂さんが作る、ようかんと焼きまんじゅうもオススメです。
浦川さん
そもそもどうして、お酒を造る会社がゆうこうを栽培しようと思ったんですか?
ヨシフク
ホノカ
市内でゆうこうが自生するのは、かつて佐賀藩だったここ外海と土井首(どいのくび)地区だけ。地元で幻の在来種を守っていこうという機運が高まったことが、栽培のきっかけでした。
それに何よりも私がゆうこうの味にほれ込んだんですよ。昔ながらの酒造りをしているので、酒の原料となる芋や米の一部は自分たちの手で育てています。だからゆうこうのお酒を作りたいと思ったとき、自分達で栽培をするのは自然な流れでした
浦川さん
もともとこの辺りに自生していたんですね!斜面地での栽培は大変ではないですか?
ヨシフク
ホノカ
作業は簡単ではないですが、現在140本ほどの樹を栽培しています。そのほとんどが農家の高齢化や後継者不足で、耕作放棄地になった農地。地域の課題解決にもわずかながら貢献できると知って、この場所での栽培を始めました。この土地で自生してきただけあって、農薬を使わず力強く育つのがなんとも頼もしいですね。今日はせっかくだから、ぜひ酒蔵にも寄って見学と試飲をして行ってくださいね!
浦川さん

うれしいお誘い!お言葉に甘えて霧氷酒造さんに伺うことにしました。お酒の工場見学は初めてなのでワクワクします。

美しい棚田の風景と、新種発見のロマン

酒蔵に着く前に浦川さんが車を停めたのは、「日本の棚田百選」にも選ばれた大中尾棚田。この棚田を潤すのが日本一の清流・神浦川の水だから、お米もすごくおいしいとか。ここのお米は霧氷酒造のお酒の原料にもなるそうです。
あいにくの天気でしたが、心地いい風が吹いて…気持ちのいい風景です!
地元長崎で「新種発見」があったなんて。その新種が実る光景を見れたなんて!ロマンを感じちゃいます。しかも発見したのは長崎市の職員さんだったって。すごーい!
浦川さんとお話ししながら、この果実の謎が少しずつ明らかになってきました。

2001年、土井首地区の担当になった長崎市の職員さんが、土地の歴史を学ぼうとまち歩きをした際に出会ったのがきっかけ。「地元でゆうこうと呼ばれているけど正式名は?」と、樹の写真を放送局に投稿したら、柑橘の研究者から「ぜひ調べたい」とお返事が。
地元の人たちと研究者による熱心な調査・研究の末、新種だと分かったんだって!すごく身近な果実だったから、地元では相当驚いたそう!

その後、土井首地区に続いてこの外海地区でも自生が確認されました。どちらも旧佐賀藩で、潜伏キリシタンとのゆかりが深い土地だという共通点が浮かび上がり、ゆうこうの謎にますます大きな注目が集まったそうです。
2008年には、伝統的な食文化を守る活動を展開するスローフード協会国際本部(イタリア)から、食の世界遺産「味の箱船」として認定されました。

それでもなぜ「ゆうこう」と呼ぶのか? キリシタンが伝えたものなのか? まだ解明されていない多くの謎も含めて、思わず深掘りしてみたくなる果実です!

外海の酒蔵で、工場見学

霧氷酒造に到着しました。さてここからは工場見学です。目の前には海!ザザーンという波の音をBGMに作られるお酒だなんて、それだけでもうすでにおいしい気がする!

ここでは主に芋焼酎や麦焼酎を仕込んでいるそうですね。こんな大きな甕(かめ)初めて見ました!
ヨシフク
ホノカ
まず機械で米や麦を蒸して麹(こうじ)を作ります。そして大きな甕に移して発酵させるのが一次仕込み。それから芋焼酎なら芋を加えて、さらに発酵させるのが二次仕込みです。ここを見てみてください。
浦川さん
大きなタンクに入ってるのは何ですか?ポコポコ音がしています!
ヨシフク
ホノカ
これが二次仕込み中のお酒、発酵してる音です。手をかざすと温かいでしょう? 部屋の温度や湿度を管理しつつ、様子を見ながら1日に数回、様子を見ながらかき混ぜて酸素を送り込む”櫂入れ”(かいいれ)をしています。
浦川さん
この発酵する音、ずっと聞いていられます。思わずムービー回しちゃいました。疲れた時に聴きますね!
ヨシフク
ホノカ
そうでしょ?お酒って生き物。ずっと見てたら愛着が湧いてきますよ。ぜひ”櫂入れ”やってみませんか?底の方から持ち上げるように混ぜてみてください。
浦川さん
いいんですか?うれしーい! よいしょ、意外と重たいですね。泡が生まれてるのがよく見えます。まさか今日こんな体験ができるなんて思ってもみませんでした!
ヨシフク
ホノカ
実は見学や体験の一番人気メニューなんです。今混ぜてもらったものは、この蒸留器で蒸留してようやく焼酎になるんですよ。
浦川さん

他にも瓶詰めやラベル貼りが体験できるそうで、挑戦させてもらいました。どっちも慎重さが求められる作業!こうやって1本1本、手間ひまかけて作られてるんだな〜。

いよいよ「ゆうこう」の試飲!実は甘酒も長崎の名物?

工場見学を終えたら直売店に移動して、いよいよお楽しみの試飲タイムです!

まずはゆうこう果汁100%ジュースをお味見。めっちゃおいしい!!酸っぱいけれど、後味がとってもさわやか。

次は果汁をブレンドした「ゆうこうのお酒」。まろやかな酸味と甘味が加わって飲みやすい!ふだん焼酎やお酒をメインで飲まない、私みたいな人にも絶対オススメです!

そして「ゆうこう甘酒」。昔ながらの麹で仕込む甘酒は、砂糖不使用・ノンアルコール。
これもすごくおいしい!ゆうこうの酸味が、甘酒特有の重たさを軽やかにしてくれるから、すいすい飲めちゃいます。

甘酒は、実は長崎市民には欠かせない飲み物なんだそうです。伝統のお祭り「長崎くんち」期間には、昔から各家庭で甘酒を作る習慣があって、くんちの季節が近づくと甘酒が恋しくなる地元っ子も多いんだって。知らなかった!

どこに住んでいても、蔵元になれます!

浦川さん、すごく楽しかったので今度お酒好きの友だちと来てもいいですか?
ヨシフク
ホノカ
もちろん大歓迎です。見学や体験は随時受け付けています。手軽な体験だと、ご自分の写真でオリジナルラベルの焼酎を作ることもできます。一口蔵元(ひとくちくらもと)の企画も人気ですよ。
浦川さん
「一口蔵元」になると、どんなことができるんですか?
ヨシフク
ホノカ
芋焼酎の原料であるさつまいもの植え付けや芋堀り・芋切り、麹の原料となるお米の田植え、稲刈り、ゆうこうの果汁しぼり、もろみの櫂入れ、瓶詰め、ラベル貼りなど、うちの商品ができるまでのほとんどの工程を、社員と一緒に体験してもらえるので、お酒好きの方から好評です。
作業は義務ではないので、遠方の方も都合に合わせて楽しんでいただけます。
会員の方には年2回、感謝の気持ちでうちの商品の詰め合わせをプレゼントしていて、それも人気の理由です。一口の申込みでご家族やお仲間もご一緒に参加できますよ。
浦川さん
1年中楽しみなイベントがあるっていいですね。長崎にたびたび足を運びたくなっちゃいます!
ヨシフク
ホノカ
この一口蔵元がきっかけで県外の方が外海のファンになってくれたり、一口蔵元同士で仲良くなった人も。徐々に輪が広がっていくのがうれしいですね。
浦川さん

ゆうこうの旅、お土産も忘れずに

最後はもちろんお土産選び!自分用にはゆうこうのお酒。お風呂上がりに炭酸で割って飲もうっと。実家の父には長崎県産麦を使った麦焼酎を購入。喜んでくれそうです!

外海は映画『沈黙 -サイレンス-』の舞台ともなった場所で、遠藤周作文学館や「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」にも出会えます。


霧氷酒造ではキリスト教の復活祭(イースター)に合わせて蔵祭りを開催されているそう。今度はキリシタンの歴史をテーマに、外海を訪れてみたいと思います!

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